スタートアップは「売上と経理」を同時に走らせろ ― 節税より“お金を増やす”思考を

 

 ブログ, 創業支援

こんにちは、札幌の新陽税理士事務所、税理士の吉田です。

スタートアップや創業したばかりの経営者の方とお話ししていると、「売上を増やすのが先か、経理を整えるのが先か」というご相談をよく受けます。

実際のところ、この二つはどちらか一方ではなく、“同時に走らせる”ことが大切です。今回は、創業期に押さえておきたい「売上・経理・資金・節税」の考え方を整理してお伝えします。

1.まずは「売上を安定させる」が最優先

スタートアップにとって最初にやるべきことは、とにかく仕事を取り、売上を安定させることです。

経理や節税のことを考える前に、まずは「お金を稼ぐ仕組み」をつくる。これがすべての基盤になります。

ただし、売上に集中するあまり経理を後回しにすると、資金繰りが読めなくなったり、税金や社会保険の支払いで慌てたり、融資や補助金の申請に対応できなくなったりします。

売上を作りながら、同時に「経理を整える」ことが大切です。

2.経理は「丸投げ」か「自分でやる」か

経理をどう進めるかは、スタートアップの経営者にとって大きな悩みです。方法としては大きく2つあります。

① 自分でやって覚える(+クラウド連携で効率化)

取引が少ない創業初期は、自分で経理をやってみるのが一番の学びになります。お金の流れを自分の手で入力していくことで、「経営の感覚」が自然と身につきます。

当事務所では、TKCシステムを活用した経理体制を推奨しています。TKCは銀行・税務署・会計基準に強く、創業期からのデータ蓄積がそのまま「信用力」につながります。

また、クラウド連携機能により、銀行明細やクレジットカード取引を自動で取り込み、記帳作業を大幅に効率化できます。

領収書をスキャンし仕訳化してくれる機能もありますので、スタートアップで忙しい経営者様にとっては大きな手助けになると思います。

社長自身が数字を確認できる環境をつくることで、「経理=経営管理」に変わります。私自身も経理しながら経営のことを考えています。

② 記帳代行に丸投げする

本業に専念したい場合は、記帳代行を依頼するのも良い方法です。

ただし、任せっぱなしにはしないこと。

月ごとの損益、預金残高、売上債権・仕入債務の動きなど、最低限の数字は社長自身が把握しておく必要があります。

税理士からのおすすめとしては

・最初の1年は自分で経理をやってみる。

・経理の流れを理解したら、記帳代行に移行するのもよし、そのままご自身で経理するのもよし。

経理を理解している社長は、判断が早く、融資にも強くなります。

3.資金繰りの管理は“命綱”

どんなに黒字でも、お金が足りなければ会社は続きません。スタートアップで最も多い失敗は「赤字」ではなく「資金ショート」です。

資金繰りがよくないときの管理の基本は、

  • 毎月の入金・支払予定をリスト化
  • 3か月先までの資金繰り表を作成
  • クラウド会計を活用して、リアルタイムで預金残高を確認

資金の流れを「見える化」しておくことで、急な支払いにも冷静に対応できます。資金繰りが安定している会社ほど、チャンスに投資できる余力があります。

4.スタートアップは節税を最小限にした方がよい理由

起業直後によくある相談が「できるだけ税金を減らしたい」というものです。しかし、スタートアップ期に節税を優先するのは危険です。

節税とは、簡単に言えば「お金を会社の外に出すこと」。つまり、手元資金が減ります。

創業初期こそ、現金を厚く持ち、資金繰りを安定化させることが最優先です。

さらに、金融機関からの借入を考えるなら、利益を出しておくことは絶対条件です。銀行は「税金を払っている=黒字で経営が安定している」と判断します。赤字や過度な節税を続けると、いざというときに融資を受けにくくなります。

節税は「利益がしっかり出るようになってから」で十分だと思います。まずは会社にお金を残す経営を心がけましょう。

5.まとめ:売上×経理×資金管理=事業の土台

スタートアップにとっての優先順位は、次の順番です。

  1. 仕事を取って売上を安定させる
  2. クラウド会計の仕組みを活用して経理体制を整える
  3. 資金繰りに注意する
  4. 利益を出して信用を積み上げる(節税はその後)

経理は単なる作業ではなく、会社を成長させる経営ツールです。数字を“見える化”することで、意思決定が早くなり、融資や投資にも強い会社になります。

最後に

新陽税理士事務所では、スタートアップ・創業期の方向けに、TKCシステムを活用した経理体制づくり、クラウド連携、資金繰り表の作成、金融機関対策までトータルでサポートしています。

もちろん経理業務が全然できない、といった方でも丁寧にご指導・サポートをさせていただきます。

「数字が苦手」という方でも、最初の一歩から一緒に整えていきましょう。

編集後記

先日、久しぶりに札幌競馬場に行ってきました。間近で見るレースはやはり迫力がありますね。

普段は机に向かって仕事をするのみですが、外に出るのはリフレッシュになります。

経営も競馬と同じで、「流れを読む」「資金をどう使うか」が大事だと感じました。競馬はうまくいきませんが・・笑。

スタートアップの方も、日々の経営の“流れ”をつかむために、数字を味方にしていきましょう。

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 この記事の投稿者

吉田匡

1980年(昭和55年)生まれ、新陽税理士事務所、代表税理士。
2012年(平成24年)に開業、ホームページ・ブログを見てご依頼頂くことがほとんどです。
経営者・個人事業主・創業準備中の方向けに、税金や経営に関すること(たまにプライベートも)を発信しています。
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